研究概要 |
本研究においては, 西ドイツ基本法の一原理とされる「社会国家」の原理が社会保障法の領域においていかなる実定法的原理として結実しているかを解明することが目的とされた. 西ドイツにおいても社会保障財政の急激は膨張は社会給付の一定の限界をもたらしている. こうした状況のもとで, 平等原則を根拠として, 給付行政における法律の基礎づけを求める声が高まり, この分野における法治主義原理の強化の必要が指摘されてきた. さらに, 給付行政の実質的な保障を図るために, 最近の行政裁判所判例等は, 行政処分手続における各種の法原理を展開させるようになった. たとえば, 処分の相手方に対する情報提供の義務を行政方に課すこと, 給付行政上の処分にさいして裁量基準を設定し, それを公開する義務を行政庁に課すこと, 行政内部的な効力しかもたないとされてきた行政規則に, 外部との関係において一定の法的拘束力を承認すること, などがそれである. 上に示されたような法原理はわが国の社会保障法では未定着であり, 今後のあり方を考える上で, 検討素材となる.
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