研究概要 |
民主政治を唯一正統な政治体制とするアメリカにおいて, 政治学の感心はいかにして民意が政治に反映されるかという点に向けられた. 本研究はこれを先ず, 政党論の展開という視点から問題にした. その際, 特に興味を懐いたのは政党論と集団理論-多様な集団が政治過程に参入し, 実質的に大きな影響力を行使していることを指摘する-との関係であり, いわゆる後者の多元主義的政治認識の意味を知ることにあった. ウィルソン, ローウェル, フォード等の分析にはかなりの日月を要したが, その結果, ウィルソンから1950年代の「責任政党」論に至るアメリカ政治学の政党論の系譜が, 民主政治の現実と課題とを結びつける要の地位を占めることを発見した. 集団理論を前面に押し出し, 政党をその中に解消乃至埋没させるようなアメリカでの動きや風潮がいかなる意味を持つかが判明すると共に, 「責任政党」論は民主政治における政党の課題と目標について一定の理論的射程を持ち, 政党論一般に対する批判的視座を与久るものであることがわかった. こうした検討を踏まえ, 問題をより遡って分析すべく, その後, 世論観の変容を追跡している. 言うまでもなく, 世論の安をどう捉えるかは民主政治において重要な責任を負う政党にとって揺がせに出来ない問題であり, 世論の安如何によってその責任の意味, ひいては民主政治一般の意義も決定的な影響を蒙らざるを得ない. この点で, 政党のみならず世論についても卓見を示した今世紀前半の政治学者ローウェルについて研究を統行中である.
|