研究概要 |
標題の通りの研究をほぼ全面的に完了した. まず, 昭和60年度からはじまったわが国の税制改革の動きを, クロノロジカルに追った. それは, ある意味で, 国民の公共選択を意図的に政府の期待通りの方向に導く戦略的なプロセスであった. しかし, 税制という個人・法人に深刻な影響を与える争点については, ログローリングやプレシャーグループによる「金銭的説得」も有効に働かない. 結局は個人の税制に対する真の選好が改革案の成否を決定する. これに対して, ほぼ同時期に開始されたアメリカの税制改革は成立した. その理由は, 納税者の選好が多数派においてこれを支持したからである. その本質は, 税の公平さを真に回復しようとした. 税の優遇を受けていたのは, アメリカで高所得層であった. したがって, 改革案において説得を受けるべきものは高所得者層であった. これに反して, 日本では, 税の公平を図るということはより, これからは税の負担は薄く広くということだけが中心となり, したがって, 説得すべき対象は中・低所得者層であった. いわば本来的に納税者多数派にチャレンジしようとするものであった. その意味で納税者多数派から否定されたのは当然である. この研究は, 以上の点を実態的に追跡し, 日米比較という形で税の公共選択論の1つの型を示しえたと思っている.
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