研究概要 |
日本のマーケティングは、戦後の高度成長期の初期にアメリカから輸入されたが、その後、改良・精密化され、しだいにアメリカからも注目される我国独自のものに形成されていった。それは技術革新に支えられる一方で大量生産体制を実現しつつ、他方では多様なニーズを実現するという特徴を有する。その理論的・実証的解明のために、本研究では日本の代表的産業である家電産業と自動車産業および化粧品産業をとり上げた。そして、まずは各産業における個別企業の内外部にわたる資料とインタヴュー調査によって、その実態を正確に把握し、さらに高度成長期と低成長期のマーケティング戦略の対比を念頭に置きながら、日本企業のマーケティングの特徴を理論的に明らかにした。 高度成長期においては、マス・マーケティングが特徴である。互換性部品とベルト・コンベアー・システムによって、大量生産された商品を国内・海外市場に販売することによって、マズ・マーケティング体制を実現した。この状況は家電産業を始め、自動車産業において典型的に見られる。 低成長期に入ると、消費者ニーズの多様化に加えて、需要が停滞し、かつての大量生産とマス・マーケティング体制の存続が困難になった。この問題の解決のために重要な役割を果たしたものの1つに、生産過程における技術革新であるFMS(Flexible Manufacturing System),CIM(Computer Integrated Manufacturing)がある。これらは顧客ニーズの個性化、即時的充足化を可能にした。もう1つは海外市場を積極的に開拓し、グローバル、マーケティングの展開を大きく切り開いたことである。今回は化粧品産業のマーケティングにまで十分な研究ができなかったが、今後収集した資料をもとに一層深く研究すると同時に、日本企業のグローバル・マーケティングに関する研究を一層深めたい。
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