研究概要 |
日米間の貿易不均衡の拡大がアメリカ保護主義を強め, 同時にドルの暴落の危険が顕在化するなかで, アメリカの労使関係はかつてない「激動の時代」を迎えている. それは歴史的観点からも大きな転換期であるといえよう. 1.レーガン政権の労働政策の基調: 1985年以降の一連の労働争議に対するレーガン政権の姿勢は, 「自由競争」と市場原理にもとづく, いわゆるディレギュレーション政策を基軸にすえて, 労働組合に「譲歩」を強制するものであった. 従って, 賃金凍結, 労働時間延長, 付加給削減, 労働強度増大につながる作業慣行の変更を含むコンセッションバーケニングが一般化し, アメリカ労働運動の「冬の時代」が固定化しつつあるかにみえる. 2.動揺するアメリカ的雇用・労働慣行: 現在, アメリカ労使関係は, 内部から大きく変貌しつつある. 「労働協約」の内容にも明らかなように, 賃金抑制と雇用調整の展開は, アメリカ型ビジネスユニオニズムの破綻をもたらした. AIFやCOLAの矛盾さらには先任権制度にもとづく雇用保障システムの事実上の崩壊がもたらされるに至った. 3.進行する労働組合の「空洞化」: 80年代のアメリカ労使関係の動向は, まさに「労働組合に対する経営の挑戦」を基本とし, 大量失業時代のなかで労務管理の構造をも大きく変えつつある. GMのQWL運動やフォードのEIプログラムなどは, アメリカ経営者の労務管理思想の大きな転換を前提として具体化した労務政策であり注目に値いする. それは明らかに労働組合の組織と機能とにインパクトを与えているのである. (4)アメリカ労使関係の展望: アメリカ経済とそれを支える企業経営にとって, いま最も求められるものは, 産業の空洞化を生みだす多国籍企業の世界的展開に対して, 労働組合が具体的政策を対置することである.
|