研究概要 |
複素多様体上の解析に関する研究は, 数学の種々の分野と密接に関連しながら進展している. 本研究では複素解析, 調和解析, 微分幾何等の立場から複素m次元空間から複素n次元射影空間への正則写像の代数的退化問題, 正則断面曲率一定なn次元ケーラー多様体の中の曲面の分類を解明することを主目標として研究を進めた結果, 次の成果が得られた. 複素m次元空間から複素n次元射影空間P^n(C)の超曲面Vへの任意の正則写像の代数的退化問題については, VがP^3(C)のd次の殆どすべての超曲面Vdである場合d≧5ならば, 正則写像は代数的に退化する(森正気)ことが解明された. この方面の成果はまとめてアメリカの雑誌に投稿中である. n次元擬算面写像の歪曲性への応用をめざし, n次元環状領域のモジュラスについて, あまり試みられていない下からの評価を試みた結果, ある意味で精密な評価式(居駒和雄)を得た. なおこの応用について考察中である. n次元数空間R^n上のp乗可積分空間におけるフーリェ・マルチプライヤーについてヘルマンダーが得た種々の結果に対応して, 吾々は等質ベゾフ空間の場合のフーリェ・マルチプライヤーを考察した結果, exp(iAIξI^2), ASY++, ξ∈R^nの非マルチプライヤーなことなど若干の類似性と一般化(水原昂廣)が得られた. この主要結果は, Math.Naehr.133(1987)にまとめて発表した. 正則断面曲率一定なn次元ケーラー多様体の中の曲面の分類については, n=2の場合に概複素構造を用いたケーラー角度をしらべた結果これが一定である(尾方隆司)ことが解明された. 従ってn=2の場合はガウス曲率が一定な曲面の分類に帰着されるが, なお一般の場合を考察中である. 正則解析関数を係数にもつ線形常微分方程式に対する演算方法は, これまで, 目下その応用を考察中である.
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