研究概要 |
時間遅れを含む分布系に対し, その制御理論に現われる各種の問題の研究を行った. 本研究は大きく分けて次の3つにわかれる. 1.状態空間論;有界な遅れをもつ関数偏微分方程式により記述される系の"状態"初期値と初期関数からなる関Lp-空間の枠組で設定し, 基本解の構成を通してこの状態空間の構造を明らかにする, いわゆる構造作用素を導入する. この作用素を用いると, 状態作用素(制御を考えない自由系の動特性を記述するCo-半群の生成作用素)のレゾルベントやスペクトルまた一般化固有空間の基底の構造を自然な形で決定できる. またそれらの表現より, 一般化固有空間の完備性や点完備性のための条件を与えることができた. 2.システム論;1で述べた自由系に対し, 各種の制御器や観測器を取りつけた系を考える. これらの系に関する可制御性, 可観測性, 可安定性, 極配置可能性, および未知パラメータを一意に決定するための可固定性といったシステム論的な諸概念の間の関係を調べ, その必要かつ十分条件を求めた. 特にその1つは階位条件と呼ばれ, 状態作用素のスペクトル分布と制御器等との関係を代数的に表現するもので, 工学的にも容易に検証可能である. 3.最適制御;2で述べた制御系で可制御性が成りたっているとする. この時, ラグランジュの問題, メイヤの問題, レギュレータ問題に対する最適解の存在と一意性を示すことができる. またレギュレータ問題については, その最適解の特徴づけとして構造作用素と双対系により表現されるリッカチタイプの方程式を導いた. 制御変数に制約のある最小時間制御問題や絡端値制御問題に対しては, 点完備のもとで, 最大値原理やバンバン原理の成り立つことがわかった. 1〜3で展開した方法論は遅れのない分布系に対しても有効である. 以上の結果は, 学会講演, 研究集会講演を経て, 以下で記した雑誌, 報告集等に発表された.
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