研究概要 |
原子核乾板を現像処理すると, ほとんどのハロゲン化銀が抜け, 厚みが半分以下になる. 特に乾板面に垂直に入射した飛跡は, 銀のグレインが重なり情報量が減少する. この対策として, これまではグリセリンを含浸させ, 空気中の水分を吸収することで膨潤させる方法が取られてきた. 本年度の実験では, グリセリンを多く含浸させ, 乾板を処理前の1.5倍の厚みにし, 入射角度とブロッブ密度の関係をしらべ, 0.5倍の厚みでは30度入射のブルッブ密度は水平の場合の70%であったのに対し, 30度までほぼ100%になり膨潤の効果が確認できた. しかしグリセリンによる方法は, 外気の湿度でその厚みが大きく左右されるので, これに変わる方法を捜した. 原子核乾板の膨潤・固定には, 現像処理の最終段階である乾燥前に適当な置換剤で水分と置き換え, しかる後に有機物で固定する方法が考えられる. 今回は, 置換剤について種々テストを行ったが結論から言って適当な物質は見つからなかった. これは原子核乾板のゼラチン膜が半透膜のため, 少し分子量が大きなものが浸透しなかったためと推察できる. 実際には炭素量が3のグリセリンは浸透するが, それが6のジプロピレングリコールは浸透しない. 置換剤としては水溶性であることが必要であるため, 最初にエタノールを試みたが, エタノールはほとんど浸透しないことが分かった. そこで, 花王石鹸(株)毛髪研究所荻野研究員の提言に従い, ゼラチンに浸透するグリセリンと似た物質であるプロピレングリコールとジプロピレングリコールをテストしたが, エタノールの場合と同様にゼラチンに浸透せず, 置換剤として不適当であることが分かった. 今後他の物質, 例えばフジフイルム(株)で出している塗布前に加える膨潤剤(粉末)なども含め試験する予定であるが, 低い分子量で含浸させ, 高分子化する事も含め検討していく.
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