研究概要 |
1.現在京都大学化学研究所に建設中の7MeVの陽子線形加速器を入射器と想定した小型の陽子シンクロトロンの設計を行った. 2.陽子のエネルギーは250MeVを目標にした. これは陽子線によるがんの治療に適したエネルギーである. 3.シンクロトロンリングの設計にあたっては, リングを単に通常のシンクロトロンとして使うだけでなく, ビームの時間的構造を変化させるための蓄積リングとしても使うことを考慮して設計した. 4.全体を4個の偏向磁石で基本的な性質が決まるように入射・出射角を決め, いわゆるエツジ集束力を利用したシンクロトロンとし, 四重極電磁石は補助的に使用する方式とした. 5.ゼロエネルギーの粒子に対して等時性になるようにした. つまり遷移エネルギーがゼロ, 即ちγtr【approximately equal】Pとなっている. さらに補助の四重極電磁石を用いれば集束性を保ちつつγtrを変えることができる. 集束性を示すベータトロン振動数は水平方向νx〜1.2, 垂直方向νz〜1.7程度となっている. 6.全系は直径7m程度であり, 病院等においても広い部屋を必要としないものが設計できると考えられる. 7.今後テストベンチを製作し, 低いエネルギーでの入射の場合実際にどの程度の強度のイオンを蓄積できるかといったテストをすることがシンクロトロンの加速の繰りかえしをどれだけにするかといったことにとって必要である. 8.したがってビームの時間的構造を変える蓄積リングを兼ねた小型シンクロトロン用リングの試作が次の段階の研究になる.
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