研究概要 |
スピングラス転移に対する一軸性の異方性の影響を明らかにするため, 六方晶でイジング型の希薄磁性合金ZnMnの単結晶試料を作成し, He^3-He^4希釈冷凍機を用いて0.1K<T<4.2Kの範囲で, 断熱法による磁気比熱の測定を行なった. 実験に用いた試料は, 温度を下げるとともにTg11=0.77Kでスピンのc軸(容易軸)方向成分のみ凍結する縦スピングラス相, Tg〓=0.29Kで横方向(C〓)のスピン成分も凍結する混合スピングラス相へと2段階に逐次転移するMn濃度600ppmのものである. 実験の結果得られた磁気比熱はTg11よりやや高温で最大となり, Tg11及びTg〓では特に異常は見られず滑らかに温度変化する. この様な温度依存性は通常のスピングラスと同様である. 又, 低温では典型的なT-リニア則に従わず, T^n(n=2), 又はギャップ型のexp(-△/T), (△〜0.5K)によくフィットする. どちらが良い近似になっているかはより低温の比熱から明らかになるものと考えられる. いずれにせよこうした温度依存性は低温での微少な磁気励起に異方性が反映したものと考えられる. 次にc軸に平行に外部磁場を加えて比熱の外場依存性を測定した. その結果, 2K以下では磁気比熱は外場とともに減少し, この負の磁場依存性はTg11近傍で偉大となることが分った. スピングラスオーダーがTg付近の比熱に強い磁場依存性をもたらすことはCuMnですでに報告されているが, 特にZnMnの場合, 得られたこの様な異常がスピンの縦方向成分の凍結と密接に関係するものと考えられる. 現在, 外場をc軸に垂直(スピンの困難軸)方向に加えて測定を行ない, ZnMnのスピングラス転移の方向依存性を比較研究すべく準備を進めている. 今後, 比熱の測定温度を100mK以下に拡張して, 微細な低温励起の様子をより明らかにして行く計画である.
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