研究概要 |
TaSe_3は結晶構造の特徴から考えて,一次元電導性を示すと考えられ,超電導状態にその特徴がどのように表れるかを調べるのが目的である。結晶のb軸(チェイン軸)に平行および垂直に磁場をかけたときの反磁性磁化を超伝導量子干渉計(SQUID)を用いて0.4K以上で測定した。電気抵抗率の測定結果と併せて,次のことが判明した。 (1)3Amm^2のごく僅かの電流密度で超伝導は完全に破壊される。もしも,電流が試料内で一様に流れているとするならば,電流自身の作る磁場の大きさは試料の端で最大になる場所でさえも,0.047[Oe]である。一次元性を反映して,電流が試料内で局所的に大きく流れていることが判った。 (2)一定磁場(7.2mOe〜4.0Oe)中での反磁性磁化の温度依存性は転移温度でほとんど何の異常も示さない。0.4Kでの反磁性磁化率の値は,いくら大きくても,-3.0×10^<-3>emu/cm^3以下であり,極めて小さな値である。 (3)電気抵抗率がゼロになる転移温度2.1K以下で,反磁性磁化率は温度に対して極くわずか変化するだけで,系統的な変化を示さない。 (4)以上の結果はTaSe_3が非常に弱い超伝電導体であることを示す。これらの現象は次のように考えることができる。1本のヒゲ結晶の中で,2.1K以下では,非常に細い半径aのフィラメントが何本かが超伝導状態になり,超伝導電流を運ぶことができる。磁場侵入長λがλ》aの関係になり,外部磁束が試料内部に侵入し,マイスナ-効果は非常に小さくなる。また,半径aのフィラメントは互いに離れていて,フィラメント間のジョセフソン結合は0.4Kまで非常に弱いことが判った。 (5)ロンドンモデルに基づき,a/λの関数として,反磁性磁化率の計算を,コンピュ-タ-で系統的に行った。その結果,TaSe_3はa/λの値は、大きくても,高々0.30である系であることが判明した。
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