研究概要 |
本研究推行の為以下の3つの装置を製作しいづれも成功した. 中性子非弾性散乱を高温に於て一定温度で制御し乍ら実験できる高温イメージ炉を作製し, 到達温度約2分間で1000°Cに到達できた. その後0.1°以内で制御が出来た. CoS_2単結晶作製の為電気炉及び塩素ガス封入装置を製作し, 既にCoS_2単結晶が育成できました. 帯磁率測定の為に磁気天秤を整備したが低温測定の為にHeクライオスタットを製作した. 1lの液体ヘリウムで約3時間の測定が可能となった. 研究成果はMnPの高温における常磁性散乱を観測し, 低温のスピン波で既にみつけられている異方性が常磁性スピン動特性にも見られる. 例えば常磁性状態でのスピンの揺動を決めるエネルギー巾のQ(モーメンタム)依存性は結晶の方向に依って著しく異なる. このような新しい現象は他の立方構造をとる強磁性体にはない. 低温におけるスピン波の分散曲線がMnPのバンド構造をよく反映しているとすると, 同様の異性が高温迄残って常磁性のスピン揺動を決めているという実験事実ではなかろうか. この点を追求する為にもう一つの準局在系結晶のCoS_2の常磁性散乱を測定しようと計画し, 単結晶を育成している. 育成法は種々試みた結果, 従来行われた化学反応を利用する方法が最も現実的であることがわかったが, この方法は大変な時間がかかる. 現在でも育成中であるが5mmΦの球状の試料を得るのに約2ケ月位必要となる. その間に高温超伝導の研究を行い, その超伝導体の母結晶となるLa_2CuO_4の単結晶で2次元スピン相関を見つけることが出来たなど, 多くの成果が得られた. その内で特筆すべきことは, この結晶のネール点がちょっとした酸素の欠損量で約200°も変化することで, この原因として酸素の微かな量の変化が結晶歪を与え, この歪が反強磁性秩序を支える相互作用と異方性を制御していることをつきとめた.
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