研究概要 |
1.反射型偏光分光法の定式化:本研究の手段となる反射型偏光分光法を定量的手段として利用することを考え, 媒質中の非線感受率と偏光分光信号の間の関係式を導いた. その結果, 励起光の最低次の効果を考えると信号は3次の非線型感受率X^<(3)>の絶対値の2乗に比例し, その比例係数にあらわれる媒質の情報はすべて線形反射係数で書けることが明らかになった. すなわち反射係数の測定を合わせて行うことにより, 偏光分光信号からX^<(3)>を評価することができる. また, この分光法は, 媒質の強い吸収領域内での分光も行えるものであり, 固体の励起状態の分光に適していることが明らかになった. 2.CuCl,red-HgI_2の励起子分光への応用:上記の分光法の評価を行うために, CuClのZ_3励起子, red-HgI_2のA励起子で測定を行った. 両物質においてレーリー型共鳴信号, 励起子分子2光子共鳴信号が見い出された. まずこの2つの信号の起源を調べるために4-レベルモデルを用いて偏光分光信号の計算を行った. その結果と実験結果を比較することにより, 励起子系の縦緩和や偏光緩和について知見を得ることができた. また, 1で述べた表式を用いてX^<(3)>の値を求めた所, レーリー信号に対し1×10^<-5>esu以上のきわめて大きな値が得られた. これに加え, red+HgI_2では, 励起光強度に対する信号強度の依存性が励起子分子信号の場合にX^<(3)>で記述される場合とは異った依存性を示すことが見い出された. 従って, red-HgI_2では励起子分子の2光子励起のメカニズムがCuCl等とは大きく異ることがわかった. 3.アントラセン表面励起子系への応用:固体の表面近傍の励起子の性質を調べる上で興味深いアントラセンへの応用を考えた. 本研究では, ポンプ, ブローブ法により, 光励起による反射率変化の測定を行った. また, ファイバーディレイを用いた時間分解分光を試みた.
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