研究概要 |
ランダム磁場効果の実験は, 静磁場中の希釈反強磁性体を用いて, 主として中性子散乱, 比熱, 磁化測定によって精力的な研究が進められてきた. しかし, 3次元磁性体の実験結果の解釈については問題点が多く, 統一的な見解を得るための努力が続けられているが, 今のところ, 3次元ランダム磁場Ising系が相転移を示すのか(de<3), あるいは, 相転移が破壊されているのか(de≧3)が決定されていない. そこで, われわれはこの問題を解決させるためにRb_2Co_cMg_<1-k>F_4, Mコ_cZn_<FC>F_2についての比熱, 磁化の測定を行い, すでに他のグループによって行われた種々の実験結果をも統一的に理解するための新しい見解を得ることができた. つまり, 希釈反強磁性体に一様磁場をかけると, ランダム磁場のみならずスタガード磁場(スタガード磁化)が誘引されることが重要な点である. 反強磁性体にかかるスタガード磁場は相転移を破壊するが, これとランダム磁場が共存することが問題の解釈を難しくしてきたものと考えられる. スタガード磁化が誘引されることは磁化測定に直接反映されている. 静磁化率が, 反強磁性体であるにもかかわらず, T_Nで発散する現象はすでにわれわれが見出している. 比熱の実験の一例として, Nn_<0.8z>Zn_<0.18>F_2の実験結果について述べる. 零磁場中での入型異常が磁場の増大とともに対称的に, かつ, 鋭い異常を示すようになる. また, 異常比熱の振幅も増大しており, 磁場中での2次相転移の存在を示している. ところが, さらに磁場を増やすと, ピークは明らかにroundingを示すようになり, 高磁場中では相転移がこわれることを示す. この奇妙な磁場依存性は, 上記2つの競合する磁場が誘引された結果であろう. 希釈反強磁性体の静磁場中での相転移現象の観測結果を説明する上記の議論から, ランダム磁場中のdeはde<3を満たすであろう.
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