研究概要 |
1.ヘキサジイン型ジアセチレンの置換基R,R'をカルバゾ-ルとしたDCHは(1)トポケミカルな固相重合によるモノマ-結晶からポリマ-結晶への相転移、(2)生成されたポリマ-鎖の呈色が変化する色相転移、(3)モノマ-結晶が持つ単結晶転移型の固有一次相転移を示す。γ線重合法を用いた本研究では、(1)は重合率が25〜30%で起きる不連続転移であるが母体結晶の外形は保持されており、したがって、固溶体という均一過程を経て配向性高分子単結晶へ転移すること、(3)は正しくは148Kに存在し、ポリマ-生成に伴う歪エネルギ-の蓄積で低温側に移動を始めて重合率30%近辺では40Kも移動すること、低温相における過剰歪エネルギ-は2.8〜3.6kcal/molで(3)の不連続転移後高分子相になるとこの転移現象はもはや起きないこと、またこの移動する一次相転移は可逆的であり(2)の色相転移を伴なって高温相では青色、低温相では赤色を呈し、ポリマ-が受ける歪は電子状態にまで影響していること、が明らかとなった。 2.DCHのR'を4-メチルテレフタロイルまたは2,4-ジニトロフェニルエ-テルとした非対称ジアセチレンを新たに合成した。何れも単斜晶系に属するが、前者はモノマ-の積層軸とモノマ-の分子軸とのなす角度が68°、積層方向の格子定数が4.12Åである。約50Mradのγ線照射で何れにもトポケミカルな1,4-付加重合は全く見られなかったが、この結果はボ-マン経験則の正しさを証明している。 3.R,R'にウレタン基を含むTCDUの配向性高分子単結晶の呈色は赤色である。これのX線構造解析はDCHの色相転移が化学結合の組替えではなく長距離π電子共役構造の破壊に因ることを支持しているが、TCDUポリマ-鎖が歪んでいるとは考えられないので、例えばπ電子の置換基への流入出を考慮した電子密度変化、結合力変化、コンフォメ-ション変化という一連の構造変化のような模型を考える必要がある。
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