研究概要 |
四塩素亜鉛酸ルビジウム〔Rb_2ZnCl_4〕を代表とする結晶群には, 基本的にはβ-K_2SO_4型構造に属しながら, 多種多様な強誘電性相転移, 強弾性相転移, インコメンシュレート(不整合)-コメンシュレート(整合)相転移をする物質がある. 従来からわれわれはそれらのうちの数多くの物質の強誘電性を明らかにしてきた. 本研究では, さらに多くの種類のRb_2ZnCl_4群物質の単結晶を育成し, それらの誘電性を明らかにし, Rb_2ZnCl_4群物質に多種多様な相転移の型がみられる原因を解明しようとした. すでにRb_2CoCl_4とRb_2CoBr_4のa軸方向の強誘電性は明白となっているが, 本研究では, 原料を真空封入し, ブリッジマン法により育成した単結晶について, それらの強誘電性を再吟味し, 誘電率の温度, 方向依存性, 自発分極の温度依存性を明らかにした. さらに, Rb_2CoBr_4のb軸方向試料の-178°C以下いおいて, Rb_2ZnBr_4にも見られるような反強誘電的二重履歴曲線をみいだした. 斜方晶系のK_2CoCl_4結晶のa軸方向の誘電率には加熱時の181°Cに鋭いピークが見られ, この温度以下でa軸方向に強誘電性が現れることを新たに見いだした. さらに, D(電束密度)-E(電界)履歴曲線の観測, 焦電性の測定, 反転電荷法によって自発分極の温度依存性を明らかにした. K_2CoBr_4の誘電測定と示差熱分析の結果から, 約200°Cの転移点を越えたか否かでこの温度以下に2つの状態があることが分かった. 一度この転移点以上に加熱すると, 最初の状態に戻るには室温で約半日の時間を要することから, 前者を低温安定状態, 後者を高温安定状態と呼ぶことにした. 両者はそれぞれ-120°Cと約200°C, -90°Cと30°Cで相転移し, 高温安定状態の30°C以下で強誘電的D-E履歴曲線が観測されるが, 現在までに得られた結晶にはあまり方向依存性は見られていない.
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