研究概要 |
本研究の目的は銅蒸気レーザーの高速繰り返し性を利用して分子の高励起状態スペクトルのような弱い遷移の分光研究に役立てることである. このため, 2台の銅蒸気レーザー励起色素レーザーによる光音響法による二重共鳴分光および銅蒸気レーザー励起色素レーザーとCO_2またはN_2Oレーザーによる光・赤外二重共鳴分光について研究を進めている. いずれの二重共鳴も非常に緻密な高励起状態スペクトルを解析可能な状態にするため, 遷移の下準位を選別する目的であるが, 前者では二つの高励起状態, 後者では高励起状態と低い振動励起状態を結んだ二重共鳴である. 1.2台の銅蒸気レーザーの同期発振の実験 銅蒸気レーザーはパルス発振レーザーであるから, 同期をとる必要がある. このレーザーはトリガーパルスからレーザー出力までサイラトロンなどにより約2μsの遅れがある. 我々は2台の発振パルスのジッターをレーザーパルス幅の約1/10の2nsに収めることに成功した. 2.光音響分光 銅蒸気レーザーは繰り返し周波数が約7KHzと他のパルスレーザーより2桁近く高いので, 我々はピエゾ超音波検出器をレーザーの繰り返し周波数の高調波(5ないし7倍波)に共鳴させて16個直列につなぎ, また吸収セルの大きさはほぼ音波の軸対称モードに共鳴するようにした. この方法は通常用いられているエレクトレットマイクロフォンによる光音響分光よりはるかに高感度になることがわかった. 3.光・赤外二重共鳴 10μm帯の赤外CO_2およびN_2Oレーザーは波長固定のため, 限られた分子としかコインシデンスをとることができないが, いずれも1Wを越える出力の連続発振レーザーであるから, 高感度が期待できる. 目下, NH_3とC_2H_4の二重共鳴分光を試みている.
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