研究概要 |
1.人為的印加応力の記憶の安定性: (1)花崗岩, 玄武岩, 安山岩に一軸圧縮応力を印加し, その記憶が消滅する速さを比べた結果, 花崗岩, 玄武岩, 安山岩の順に見掛け上遅くなる. (2)人為的な先行応力がある花崗岩試料に繰り返し一軸圧縮載荷をすると, 先行応力印加後の時間が短い場合には, 先行応力の影響が繰り返し載荷の1回目のみならず2回目以後の応力歪曲線中にも認められる場合がある. (3)載荷継続時間と記憶の安定性に関して実験が現在継続中である. 2.地殻応力記憶の安定性: (1)比較的大きい(約30Mpa)地殻応力下にあった試料を用いて, 地殻応力の記憶が地殻応力値そのものの記憶であり, 偏差応力値の記憶ではないことを確かにした. これは地殻応力の記憶機構が人為的な一軸載荷実験の結果をもとに従来考えられてきた応力記憶機構と異ることを意味している. (2)地殻応力の記憶が回復する性質は花崗岩のみならず玄武岩, 安山岩にも見られる. 回復の速さは花崗岩, 玄武岩, 安山岩の順に遅くなる. (3)約5年間大気圧下に放置された2種類の安山岩に変形率変化法を適用した結果, 試料には地殻応力値と見做し得る応力値が記憶されていることが明らかになった. たヾし, 繰り返し圧縮載荷時の変形挙動を採取後約1年で測定されたものと比較すると, 1回目載荷時の挙動に変化が認められる. (4)地殻応力の記憶が消滅する過程で, 記憶されていた地殻応力の値の認識が困難になることはあっても, 応力値そのものが変化することはない. (5)本研究計画にしたがって購入した真空恒温槽を用いて地殻応力記憶安定性の環境依存性に関する実験が開始された. 真空で100°C, 24時間放置された花崗岩試料においても記憶は消滅しない. しかし, 一軸圧縮下の試料の変形挙動には変化が認められる.
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