研究概要 |
1.地殻の微小ひずみ変化を精度良く測定するための新しい観測方法としてホログラフィ干渉計測法の原理に基づく観測システムが京大防災研究所において開発されたが, 本研究では今年度, 天ケ瀬地殻変動観測室(京都府宇治市)において, レーザーホログラフィ装置を用いた長期間の連続観測を実施した. 得られた観測データーは, 同観測室に既設のレーザー伸縮計(2成分)の記録と合わせて解析し, 潮汐力による観測坑道の微小変形の空間的な特徴を明らかにしつつある. 2.これとは別に, 移動型のレーザーホログラフィ装置を用いた移動観測を近畿地方の2ケ所の観測室(屯鶴峯;奈良県香芝町, 岩倉;京都市左京区)において2週間〜2ケ月の期間で行ない, これらの観測室の観測坑道の形状に固有なひずみ変化の局所的な特徴を明らかにするための基礎的なデーターが得られた. この成果は, 今後近畿地方のテクトニックな応力場を統一的に理解する上で役立つと考えられる. 3.さらに, 将来, この地域の他の場所においてもホログラフィ装置を用いた移動観測を行なうための予備調査を, 紀州観測室(三重県紀和町)において実施した. 4.ホログラフィ干渉計測法は対象となる被写体(本研究の場合, 観測坑道の壁面)に非接触で, その形状変化をレーザー光の波長を単位として定量的に検出できる優れた方法である. しかしこれを長期間の地殻変動連続観測に応用するためには, なお多くの問題点がある. この方法の難かしさの一つにホログラム乾板の取扱いがあるが, 乾板を使用せずに干渉計測を行ない得るようにするため, エレクトロニック・スペックルパターン干渉法(ESPI)を導入して観測装置の改良を進めている.
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