研究概要 |
大気エアロゾルを, 粒径2μm以下(微小粒子)と2μm以上(粗大粒子)の二段に分離して捕集できるバーチュアルインパクター式エアロゾルサンプラーを用いて, 微小粒子領域と粗大粒子領域の大気エアロゾルを分別捕集しその組成分析を行った. ただし, これまでのバーチュアルインパクター式エアロゾルサンプラーは2日間程度しか連続吸引捕集できなかったため, 2週間までの連続吸引捕集が可能なように捕集部(フィルターホルダー部)を拡大改造した. しかしこの拡大により, 粗大粒子捕集部では粒径100μm程度の巨大粒子がろ紙の中心部分にのみ集中して捕集される傾向を生じ, ろ紙を分割して各成分を分析する際に大きな誤差を生む結果となった. この点について色々と検討を行い, 最終的にテフロン製の拡散板を装着することにより良好な捕集が行えるようになった. この改造したサンプラーを用い, 昭和62年の冬季より測定を開始した. 現在得られている結果では, 札幌における大気エアロゾルは, 粒径2μm以下の微小粒子領域においては, ほぼ, 黒色純炭素, 有機物, 硫酸塩, 硝酸塩, アンモニウム塩が大部分を占め, さらに少量の海塩粒子及び土壌粒子成分を加えて, 乾燥重量の9割程度までを説明することができる. 一方, 粗大粒子領域では, 土壌粒子, 海塩粒子及び有機物と少量の黒色純炭素の4成分によりほぼ乾燥重量を説明できる. 以上の組成分析結果に基づき, 冬季の札幌における大気エアロゾルの可視領域吸収係数(ni)を計算したところ, 微小粒子領域ではni=-0.04程度, 粗大粒子領域においてはni=-0.01程度の値が得られた. 今後さらに測定を継続し, 札幌における大気中の微小粒子及び粗大粒子の組成割合の季節変動と, それに基づく微小粒子領域及び粗大粒子領域の大気エアロゾルの太陽放射吸収係数の変動の測定及び考察を行っていく予定である.
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