研究概要 |
1.歴史津波史料の収集 四国・九州地方は, 慶長地震(1605), 宝永地震(1707), 安政南海地震(1854), および昭和21年南海地震の4度の南海トラフ傾斜面の活動による巨大地震による津波に見舞われている. 今回の調査では, 徳島県南部の海岸地方, および高知県海岸部の新しい津波史料を約80点, 写真とフィルム枚数にして約800枚を採集した. これまで知られていた史料は, 主として各国の藩主が, 支配の必要から作成されたものが多かったが, 今回の調査では沿岸集落に住む者の書いた史料を多く発掘した. 現地滞在日数の制限から訪れた集落の数が限られたので, 今回の調査で洩れた地域も多く, この種の調査は何らかの形で今後も継続する必要があろう. 九州では, 宮崎県地方の宝永津波の記録のほか, 寛政4年(1792)の島原半島雲仙岳の噴火に伴う有明海の津波の, 熊本県側の被害記録が発掘された. 2.現地照合 これまでに集められている古文書の記載中に現れる歴史津波の浸水範囲を示す地点の記事を採集し, 高知県の沿岸各市町村の各教育委員会の協力を得て, 現在の地図上のどの点に相当するかの調査をした. 一部の地域では測量作業を行い, 津波の高さを標定した. 3.津波の伝播・陸上遡上計算 徳島県南部海岸の数個の漁港をモデルとして, 地形, 建築物, 植生等を現状, および過去の状態に設定して, これらを反映した津波の陸上侵入の数値計算を行い, 古文書中に記載された津波の浸水高の値と照合し, よい一致を示すことが確認された.
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