1980年代初めから始まった理論的実験的研究によって黒潮大蛇行の仕組みはかなり解明されてきたがそれらは主に日本南岸域のみをモデル化した局所モデルであった。本研究は黒潮大蛇行現象を亜熱帯循環系の一現象としてグローバルに捉えようとする視点から出発した。大蛇行の予測という最終目標に至るには様々な関門を通過せねばならないが、まず、黒潮の流量の予測が可能になる事が必要である。なぜなら、黒潮の流路はその流量に基本的に依存するからである。そこで、1962年から1984年までの過去23年間の太平洋上のデータを用いて北太平洋を駆動して得られる黒潮の流量と名瀬-西之表間の潮位差を比較した。使用したモデルは準地衡二層モデルで格子間隔は1度である。内部境界面を通してのエントレインメントをパラメータ化したダンピングタイムを適当に調査しモデル上の黒潮の流量と名瀬-西之表間の潮位差の相関を調べた。季節変動については余り相関は良くないが、数年以上の長期変動については相関が非常によい(相関係数>0.85)事が分かった。亜熱帯循環内部領域の変動については黒潮の主温度躍層を表す内部境界面の季節変動がXBTによる上層200Mの平均水温の季節変動と1〜2カ月程度の先行する位相差を持つけれどもよく対応する変動パターンを持つ事が分かった。 1〜2カ月程度の位相のズレは熱的な要素を加味すれば充分説明できるように思われる。このモデルは海底地形を現実的に組み込むことが出来ず、海底地形の果たす役割りが重要になる黒潮の季節変動を再現することが出来ないので現在、多層位モデルを計画中である。この多層位モデルを用いて季節変動も含めた意味で黒潮の流路の予測の可能性を探る予定である。
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