研究概要 |
沿岸水と外洋水, あるいは黒潮水と親潮水のように異なる2水塊の境界では, 水温・塩分がその両側で大きく異なる潮境が常に形成されている. この境界にはしばしば海面浮遊物質が細長く帯状に分布することから, 潮境は水平収束線となっていると考えられている. しかし, 潮境は水平規模が小さく, しかもその位置も絶えず変化するために潮境を対象とした観測は従来ほとんど行われておらず, 潮境が常に水平収束を伴っているのかということさえ不明な現状である. 本研究は潮境に発達する水平収束線の維持機構を解明する手始めとして, 潮境付近の流況, 特に水平収束, 発達量の実態を精密に測定することを目的として行われた. 鹿児島湾東部海域で頻繁にみられる高温な黒潮系外洋水と低温な沿岸系水との境界に発達する潮境を研究対象として, 鹿児島大学水産学部実習船「南星丸」を用いて, 昭和62年9月に, 記録内蔵式水温計を取付けた表層漂流ブイを潮境上に2個, 潮境の両側に3個づつの計8個を約200m間隔で放流し, その位置の時間変化を3分間隔で落潮時の4時間にわたってレーダーで追跡することによって, 収束, 発散量, 流速分布および水温微細水平分布の潮境の両側の相違を調べた. 得られた結果の主要な点は以下の通りである. 1.潮境の両側における水平収束率には大きな相違がみられ, 潮境の外洋水側では発散, 沿岸水側では収束となった. 水平収束・発散率は10^<-4>の大きさであった. 2.潮境に対して平行な流れの発散域における相対流速シアーは, 潮境の極く近傍(100m以内)では収束域に比べて小さいことが判明した. 3.等温線は潮境にほぼ平行し, 表層水温の水平勾配は収束域で0.02°C/m, 発散域で0.0006°C/mと, 収束域で非常に大きい.
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