研究概要 |
(1)炭素中心ラジカルや酸素中心ラジカルなどの光化学的発生法とその室温付近での反応速度を通常のフラッシュホトリシス法を使って調べる事をレーザーフラッシュ装置の組み立てと平行して行なった. (2)直接ラジカル源の光照射で発生でき、かつ水素引き抜き能力の高いラジカルは酸素中心ラジカルで特に(KA)は極めて反応性が高く、石灰の液化溶媒として広く用いられる化合物をはじめ多くの有機化合物との反応速度を決定することに成功した。この時、速度定数の温度変化から活性化エネルギ-と頻度因子を求め、高温での速度定数の推定を行ない、高温フラッシュホトリシスの基礎デ-タとすることが出来た。 (3)一方, 炭素中心ラジカルのうちビニル型ラジカルは硫黄ラジカルとアセチレン化合物の付加反応より生成し, 硫黄ラジカルの減衰を追跡する間接的方法ではあるが, ビニル型ラジカルといくつかの有機化合物との反応速度定数を求めることに成功した. その結果, ビニル型ラジカルの反応性はフェニルラジカルと極めて類似しており, シグマ型ラジカルであることが類推できる. (4)同様にして硫黄中心ラジカルとオレフィンとの付加反応で生成するベンジル型ラジカルの直接追跡から速度定数を求めようと試みたが, 100°C以下では反応が遅すぎて追跡出来なかった. (5)そこで, 窒素レーザーの電源とトリガー回路を組み立て, 単発でのエネルギー増強をして, 100°C以上の高温セルとの組み合わせで, 一般に水素引き抜き能の低い硫黄ラジカルで実験を行なった所, 硫黄の電子密度の低いようなラジカルでは100°C以上では水素引き抜き能もあることがわかった. (6)高圧セルはステンレス製セルに石英ガラスをステンレス製スペーサーを介して固定する方法で試作したが, 温度のコントロールに難があり, 今後の検討課題として残った.
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