研究概要 |
1.TE102短形マイクロ波空胴共振器(中心周波数9GHz)を設計製作し既存の電子常磁性共鳴(EPR)分光計に接続した. この空胴共振器は容易に既存の円筒形空胴共振器と交換でき, 既存のヘリウムフロー型および窒素フロー型温度可変制禦装置をそのまま使用できることを確認した. また結晶保持回転具を製作し任意の角度で結晶軸まわりの角度依存性を測定可能にした. 2.卓上電子計算機を購入してEPR分光計に接続し, 計算機の命令によって磁場を掃引しAD変換器を介してEPR信号をデジタル化しディスク上に保存可能にした. デジタル化したスペクトルを積分して吸収強度を算出したり線形の解析を行なうプログラムを開発し, スピン磁化率の温度依存性の解析やダイソニアン線形のローレンツ線形への変換を高速化した. 3.多次元導電性を示す新しい有機導体を得る目的で, 以下に列挙するビス(エチレン(またはメチレン)ジチオ)テトラチアフルバレン(ETまたはMT)のカチオンラジカル塩単結晶を合成しEPRの測定を行なった. (1)α-(ET)_2X(X=I_3, IBr_2)およびβ-(ET)_2X(X=I_3, IBr_2, AuI_2). 後者は低温まで金属性を示すことを利用し, 反射スペクトルの測定と組合せて有機導体内における伝導電子の拡散と緩和について半定量的解析を行ないPhysical Review誌に発表した. (2)β"-(ET)_2AuBr_2. 低温まで金属性であり(1)の塩に引続き伝導電子の拡散と緩和について研究を進めている. (3)O-(ET)_2I_3, (ET)_2[Cu(NCS)_2]. 両者共に常圧超伝導体であり, 特に我々の発見した後者については常伝導状態における伝導電子の挙動について研究を進めている. (4)(ET)_2, IBr_2(2IBr_2・C_2H_3Cl_3)_<0.5>, (MT)I_3, (MT)XF_6(X=A_S, Sb). いずれも半導体であり半導体内における木対電子の挙動を調べることができる. (5)(ET)yMXn(M=Cr,Mn,Co,Ni,CuiX=Cl,Br,I). 伝導電子と局在磁気モーメント間相互作用の研究に着手した.
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