研究概要 |
1.単結晶を用いて励起状態の過渡吸収分光をおこなう際の最も大きい技術的困難のひとつはレーザー光による結晶のダメージである. この困難を回避する一般的方法として弱く吸収される光を用いてバルク励起をすることが有効であることがわかった. 2.この知見にもとづいてp-ターフェニル, t-スチルベン, アントラセン等の単結晶について室温での励起子過渡吸収スペクトルを測定することができた. この際アントラセン, p-ターフェニルについては偏光特性を考慮した測定を行い, 過渡吸収が強い偏光特性をもっていることを明らかにした. 3.低温では結晶の吸収スペクトルが温度変化し, 測定の条件(励起光の波長など)が室温のそれとは異ってくる. アントラセンについてはZOKで予備的な測定を行ない, 過渡吸収を検出することに成功した. 検出をさらに高感度化すれば広い波長範囲でスペクトルを得ることができると思われ, 現在いくつかの可能性を検討したいる. そのひとつにトランジエント・グレーティングがあり, その有効性を検討, 確認したが, まだ単結晶に応用するには至っていない. 4.得られた過渡吸収スペクトルと光電導の波長特性との比較からキャリヤー生成の素過程について立入った議論ができる. 高い励起状態が自動イオン化して電子・正孔が生ずるというモデルを支持する結果が得られている.
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