研究概要 |
本研究では, 赤外レーザーと紫外レーザーを組み合わせた多光子イオン化法による炭素クラスターの赤外分光を目的として以下の研究を行った. 炭素クラスターの生成は, レーザー蒸発法を用いて行うため, クラスター生成の予備実験として, YAGレーザーの2倍波および3倍波等を蒸発光源とし, AfFレーザーをイオン化光源として, 種々の条件で質量スペクトルの測定を行った. この結果, YAGレーザーの2倍波を光源として, 炭素数80程度までのクラスターが比較的安定に生成することがわかった. また, 赤外レーザーが, レーザー発振に必要な非線形結晶の行者からの納入の遅れ等ですぐに導入できなかったため, まづ, アルミニウムクラスター(Aln)のイオン化しきい値の測定および酸素, アンモニア等との反応性の研究を行った. この結果, Alnのイオン化ポテンシャルは, n=7と14で大きく低下する傾向が見い出され, 電子殻モデルでクラスターサイズ依存性が説明できることを明らかにした. また酸素との反応では, 生成物としてAl_9O_7が特異的に安定であることを見い出した. NH_3との反応では, 反応生成物であるAl_n-NH_3に大きなクラスターサイズ依存性が見られ, AlnとNH_3との相互作用は, 主に分極効果に起因することが初めて実証された. この結果は, NH_3とAl固体表面との吸着過程の微視的機構の研究に重要な基礎的情報を与えると考えられる. 一方, 赤外レーザーを用いた多光子イオン化法を実現するため, YAGレーザーの基本波(1.06μm)と色素レーザー(900〜700μm)の差周波混合により赤外光を発生させ, 赤外分光に必要な基礎実験を行った. この結果, 3〜43μmの赤外光が0.5mJ/パルスの出力で取り出せることが確認された. 現在, このレーザーとYAGレーザーの3倍波を用いた多光子イオン化法による炭素クラスターの分光実験を進めている.
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