研究概要 |
固体触媒表面における吸着種の反応性のような動的挙動は一般に昇温分解(TPD)などの方法で調べられているが, 田丸らは反応物が気相中に共存する場合と, 前述のTPDのように真空中とでは, 反応性が著るしく異る現象を見出し, Adossrption Assisted Decomposition(or Desorption)(ADD)効果と名付けた. この現象は従来は知られていなかったが, 非常に重要な知見であり, 固体表面での動的挙動に関する根本的な問題点である. この現象がどこまで一般的なものなのか調べるために研究を行った. 吸着種の挙動が反応物の共存する場合と共存しない場合とでどのように異なるかは次のような方法で実験した. 反応条件下における吸着種の量, 状態挙動を確認した上で, 気相を不活性ガスあるいは真空にして調べた. 本研究で行なった題目を具体的に列挙すると, (1)Ni/SiO2触媒によるギ酸の分解反応をIR法で調べる. (2)市販KMB触媒によるメタノールの分解反応をGC法で調べる. (3)MmO_2によるN_2Oの分解反応をGC法で調べる. (4)Ni/SiO_2触媒によるギ酸の分解反応をGC法で調べる. (5)金属ギ酸塩の熱分解反応をGC法で調べる. 上記のいづれの実験結果もADD効果を実証している. 例えば(1)のIR法の結果によれば, ギ酸分子の存在下における, ギ酸分子の分解速度は, 真空中における分解速度の20〜30倍になることがわかっていた. その他のGC法による実験結果はいづれも次の事実を示している. 即ち, キャリヤーガス中に反応分子を入れ定常状態にした後, キャリヤーガス中の反応分子の供給を停止すると, キャリヤーガスは流れているし, 触媒上に反応分子(吸着種)が存在しているにもかかわらず, 分解反応は直ちに停止した.
|