研究概要 |
人類の行なう生産と消費活動の結果, 地球上における二酸化炭素(CO_2)濃度は年間0.9ppmづつ増加の一途を辿っており, 都市部においてはCO_2の循環サイクルが破壊寸前であるとされている. 筆者は固体高分子液晶が室温で多量のCO_2を選択的に収着し, ガラス転移点近傍で急激にCO_2を脱離する現象を見出した. 本年度はコレステリルメタクリラートとブチルメタクリラートから成り組成比の異る3種類の共重合体を合成した. メソーゲン(80%)の共重合体を例に挙げて成果を説明する. (1)共重合体のベンゼン溶液から得たフィルム一晩大気中に放置した後, 10^<-6>Tarrで2週間減圧乾燥したフィルム0.4gをデラトメータに封入し, 加熱したところ90°CでCO_2を急激に放出した. 温度一定のまま63時間後までに放出したCO_2量は0.2mlであった. 空気中のCO_2濃度が0.03%である事から考えると, 一晩で多量のCO_2を選択収着したといえる. (2)次にベンゼン溶液から凍結乾燥法によって得た粉末を閉鎖循環系にとり, 400TorrのCO_2に触れさせた所, 急激にCO_2を吸着し約30時間後に吸着平衡に達した. 共重合体1g当りのCO_2吸着量はは1.3×10^<-2>molであった. 次にCO_2圧力を600Torrに変えて, 同様な吸着量を求めたところ2.6×10^<-2>molであった. 吸着量は圧力に依存していることがわかった. (3)上の2つの実験で得られた収着(吸着)と脱離の過程は非可逆的な変化であった. しかし一度加熱した共重合体を再びキヤストか凍結乾燥を行なえば, 再びCO_2を吸着する事がわかった. シリカゲル上に約5%の共重合体をキヤストした試料について, 吸着脱離の実験を行なった. キヤストに先立つて超音波を照射して得た試料の吸着, 脱離過程は可逆的であったが, 照射しない試料は非可逆的であった. この理由については次年度以降も継続して研究する. またCO_2を未利用資源として活用する反応についても着手できなかったが, 次年度以降で着手する予定である.
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