研究概要 |
新しい高利得・高時間分解能分光法として(1)非線形結晶を用いた光パラメトリック変換による方法, (2)金属蒸気を用いた2分光共鳴による方法, を試みた. これらの非線形媒質はある試料からの短寿命発光を強いポンプ光と共にこれらに入射し, パラメトリック過程又は2光子遷移により時間領域とスペクトル領域を両方同時にサンプリングする手法である. (1)ではKD*P(90°カット, 4cm)を用いモード同期YAGレーザーの3倍高調波をポンプ光としてローダミン6G等の色素溶液試料の発光をサンプリングした. 位相整合条件により発光スペクトル中の一部の波長成分がサンプルされるがいわゆるnon-collinearな位相整合により, 異なった空間方向に分布した種々のスペクトル成分が一回のパラメトリック変換であサンプリングされる条件を新しく見出した. 今回の実験では当初の目的である新しい分光法の開発の他に, 光パラメトリック発光の過程における出力の巨視的揺動効果も見出された. この効果は誘導ラマン散乱や色素の自発誘導放射について知られており, 発光が量子力学的確率過程により起こるためこの確率に基く揺動が増幅後の出力に現われるものである. パラメトリック発光においても多モード発光の際, 各モードの強度分布は全くランダムで, その光子統計を行った結果, 指数関数型の分布が得られ量子力学過程による発光が確認された. (2)ではナトリウムや水銀, カドミウム等を用いて(1)と同様強いポンプ光と色素試料の発光を入射光とし, 2光子遷移によるサンプリング分光を試みた. 検出は励起状態からの螢光又は励起状態からのイオン化によるイオン電流を観測することによって行った. (1)と異なり発光スペクトルの任意の波長成分をサンプリングするにはポンプ光の波長を掃引する必要がある. このために光パラメトリック発振器を用い波長可変光源を得た. 色素発光の寿命がこの方法で求められた. ひき続き実験を継続中である.
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