研究概要 |
分子の溶媒効果に関する新しい知見を得ることを目的とし, クラスター分子のイオン対状態に関する研究を, 光イオン化質量分析法と発光スペクトル測定の二つの方法を用いて行った. 光イオン化質量分析法においては, 超音速ノズルビームを用いてクラスターを生成し, 生成したクラスター分子をスキマーを通した後, 四重極質量分析計のイオン化室に導き, そこで希ガスの共鳴線を用いた真空紫外光で光イオン化し, 生成した正負両イオンを各々四重極マスフィルターを通し, チャンネルトロンで検出した. 検出方法は正イオンについては直接チャンネルトロンで, 負イオンに関してはチャンネルトロン直接と, コンバーターを用いた負イオン→正イオン変換法を併用して用いた. 実験はCF_3Cl, CF_3Br, およびCH_3Clの各気体のクラスターについて行った. CF3Clではアルゴンの共鳴線(11.83ev)を用いて, CF^+_3, Cl^-の各正負イオンが見つかり, この光でこの分子がイオン対創成を起している事が判明した. しかし一般にシグナルは弱く, クラスターシグナルを検出するには至らなかった. CF3Brではクリプトンの共鳴線(10.64ev)を用いるとCF^+_3, Cl^-の両イオンが見つかり, やはりイオン対創成反応が起っている事が分った. この場合正イオンのシグナルはかなり強く(CF_3)n(CF_3Cl)^+_mのシグナルも検出された. 負イオンシグナルの方は強度はまだ十分でなく, クラスターシグナルを検出するに至らなかった. 今後は負イオンシグナルの検出感度の向上が必要とされた. 発光スペクトルの研究では主に塩素分子を中心に研究を行い, 真空紫外部の発光スペクトルの測定を行った. 興味ある現象としては塩素とNOの混合気体をクリプトンの共鳴線で励起した際, 真空紫外部(170-190mm)に今まで報告された事のない構造を持った発光スペクトルが観測された事である. この発光は, NDClのイオン対状態に起因するものと考えて, 目下検討中である.
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