研究概要 |
本研究の目的は, 反応中間体の寿命を直接的に実験的な手法を用いて測定することである. そのために最も重要なことは第一に, 反応性の2種類の化合物の混合気体のファンデルワールス(vdW)錯合体を生成するためのパルス分子線源を試作することである. その分子線源の原型として選んだのは, 米国のNewport社から市販されているいわゆるEd-Grantパルスノズルである. これをそのまま購入したのでは, 我々の初期の目的には合わないので, パルス駆動のための中心部分(パルスビームソース)を1台(後にもう1台追加)購入した. また, これを駆動するためのコントローラ(電源)は, (1)市販のものを購入すると, 本研究補助金ではとても, 2台分はまかなえず, また, (2)2台のパルス分子線源の同期を取る際に, コントローラの変更があることは十分考えられる. (3)ノズル部分は変更するので, 市販のコントローラがそのまま使えるとは限らないなどの理由によって, 市販のコントローラの回路図を参考にして分子研の装置開発室で作成した. また, 本実験を行うための真空室も必要であるために, 排気室のついたチェンバー(排気ポート)を作成した. 次に, 1台のパルスビームのプランジャーみを用いて改良ノズルを装置開発室で試作した. これを用いたパルスノズルの作動テストを行うために, 分子研の機器センターから借用したエキシマー色素レーザーを用いて, 各種ベンゼン置換体の多光子イオン化(MPI)分光法を用いてパルス時間巾を測定した. 現在のところ, 市販のパルスノズルの仕様(100μ秒)には及ばないが, 350μ秒が得られた. また, Ar気体をキャリヤーにした場合には, 大量のベンゼンーArのvdW錯合体ができることを確認した. その結果を参考にして作成した混合用ノズルを用いて, パルス的に混合した気体の自由噴流によってvdW錯合体を生成する実験を現在行っている.
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