研究概要 |
電荷移動錯体は光励起により初期にイオンラジカル体を生ずるが溶媒の極性の増大やイオン対のエネルギーの程度に応じ溶媒和イオンへと解離する. この現象は分光学的には確められているものの実験的に確認された事はない. イオン対, 溶媒和イオンラジカルを同時に化学的に捕捉し, それに対する溶媒効果と基質電子供与性との関連を調べる事がその一つの手段と考えられる. 25種の三受環化合物, 例えばメチレンシクロプロパン, オキシラン, シクロプロパン, アジリジン等, とテトラシアノエチレンとの電荷移動錯体との光励起を酸素雰囲気下で行い, 溶媒和ラジカルカチオンは酸素付加体として, イオン対はテレラシアノエチレン付加体として同時に補足することに成功した. このさい溶媒極性の増大と基質の酸化電伝の低下は著しく, 酸素化反応を促進する事を見出し, 分光学的事実を初めて実験的に認めた. また電荷移動錯体の光励起反応をシクロブテン環の開環の立体化学との関連で行い, 3, 4-ジアリーIVシクロブテンとテトラシアノエチレンとの電荷移動錯体の光励起でシクロブテン環は立体選択的に共施開環する事を初めて明らかにした. この立体選択的開環は光増感電子移動でも起る事をも同時に確めた. シクロブテンの異性体のメチレンシクロブタン透導体の光増感電子移動反応も検討し, 1,4-ラジカルイオンを中間体として縮退転伝の起る事を確めると共に構造を酸素付加体として単離することにより確めた.
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