研究概要 |
固相法ペプチド合成には, 合成操作が容易であるという長所と, 合成終了後の分離操作が困難であるという短所がある. この研究においては, 可逆的な取り込みを固定化に利用して, 固相法の長所を保ちつつ合成過程中途での分離精製を可能とする準固相法ペプチド合成法を開発した. 最初にC末端アミノ酸の長鎖アルキルエステルを, 固定化された有機相に取り込ませた後, 水系溶媒中でN末端保護アミノ酸との界面におけるカップリング反応を行い, 次いで同様に脱保護を行うことでペプチド鎖の延長が可能となる. ここではロイシンエンケファリンをモデルペプチドとして選び, オクタデシルシリル化シリカゲルをステンレススチールカラムに充填して固定化有機相として使用し, 疎水性相互作用によりペプチドを固体表面に保持する方法を採用した. 高圧液体ポンプにより, アセトニトリルー水混合溶液をカラムに送液し, C末端アミノ酸ドデシルエステルを疎水性相互作用によってカラム内の固定化有機相に保持させた後, 流れの中に順次試薬を注入してペプチド合成を行った. N末端保護基としてはq-フルオレニルメチルオキシカルボニル基, 脱保護試薬としてはピペリジン類, カップリング反応としてはC末端をペンタフルオロフェニルエステルとする活性化エステル法が最適であった. 界面におけるカップリング反応はきわめて速く, 常温において数分で完了した. 合成途中のペプチドはテトラヒドロフランなどの溶媒により溶液として取り出し, 純度の確認や, 必要であれば随時精製することが可能である. これにより, 特殊な試薬を使用することなく, 単にカラムに試薬溶液を流すことにより, 固定表面に固定化したペプチド鎖を延長し, しかも中間体をいつでも取り出すことが可能であるペプチド合成法を開発することができた. このペプチド合成法は自動化することが可能である.
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