研究概要 |
アスパルターゼによるフマル酸からアスパラギン酸を生成する反応について, 酸素の反応空間の空間巾の関係を調べた. 限定反応空間は2枚のセル板とスペーサーで用意し, その空間巾はスペーサーの厚さにより調節した. セル板には親水性表面をもつものとして石英板自身(N-Q)と3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン処理した石英板(3-GP-Q)及び疎水性表面をもつものとしてオクタデシルトリクロルシラン処理した石英板(0c-Q)を用いた. 反応はフマル酸の吸光度の現象を分光光度計で測定することにより追跡した. 限定反応場の効果は空間巾dでの反応速度Vdと無限定条件下での反応速度Vdの比の対数1nr(=Vd/Vc)により評価した. dと1nrの関係を調べた結果から, 空間巾が50μm以上である場合, 1nrは零であったが, 50μmより狭い空間巾では, 表面の性質に関係なく1nrは正の値をとり, 空間巾が狭くなるにつれて1nrの値は大きくなることがわかった. 次に基質であるフマル酸の濃度と反応速度の関係を10μm空間巾のN-Q内での反応と無限定条件下での反応について比較した結果より, 本酵素反応の動力学的パラメーターは反応場を限定することにより影響をうけ, 最大速度は増加し, kmは現象することが明らかとなった. またもう一つの基質であるアンモニアの濃度と反応速度の関係を同様に比較した結果からも最大速度の増加とアンモニアに対するkmの現象がみられた. 一方, pHと反応速度の関係を調べた結果から, pH6.5からpH10の間で反応速度は反応場を限定することにより大きくなり, 酵素反応の至適pHは限定条件下, 無限定条件下いずれの場合においても, 8.5付近であった. しかし, 限定反応場の効果が最大となるpHは中性付近であった. これらの結果から, 酵素の活性中心付近の三次元的な構造及び反応溶媒である水自身の構造又は存在状態が反応場を限定することにより変化していることが示唆された.
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