研究概要 |
周期表VB属のビスマスを用いる有機合成反応は今まで皆無であったが, 最近私どもは金属ビスマスや塩化ビスマスを用い, アリルハライドを用いるGrignardタイプの官能基選択的アルデヒドのアリル化反応を見いだした. 塩化ビスマスと金属アミルニウムの存在下, 含水溶媒中においても同様の反応が進行することを見いだし, 本年度論文として発表した. フェニル基を分子内にもつ三級アルコールをBuLiと反応させ, ひきつづきBiCl3と処理したところ, 容易に環化反応が進行することを見いだした. この反応は-OBiCl_2が脱離基として働く新しい環化反応であり今後の発展が期待される. また分子内に二重結合を有する三級アルコールを用いても環化反応が進行することが明らかになった. そこで, -OBiCl_2の脱離能を利用してROBiCl_2と種々の求核試薬とを反応させ, 炭素-炭素結合生成反応の開発を試みた. すなわちベンジルタイプの2級, 3級アルコールをビスマスアルコキシドとした後, シリルエノールエーテルと反応させたところ, -OBiCl_2が脱離し対応するケトン化合物が得られることを見いだした. 塩化ビスマスが有機合成に使われた例は前述の私どもの研究以外にはない. そこでさらに種々検討した結果, シリルエノールエーテルをアルデヒドと, 5mol%のBiCl_3の存在下反応させたところ, 収率よく対応するアルドールが得られ, 塩化ビスマスがアルドール反応の効果的な触媒となることが明らかになった. この反応は触媒的不斉アルドール反応に応用することが可能と考えられ今後検討したいと考えている. なおアルデヒドのかわりにα, β-不飽和ケトンを用いると, 触媒的にMichael付加反応が収率よく進行することも見いだした. 触媒としての塩化ビスマスの発展が今後期待されるところである.
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