研究概要 |
1.ナトリウムチャンネルを解放状態に保つ生理作用を示すステロイド性アルカロイド, バトコフトキシン類は四種類知られているが, 本研究では最も構造の簡単なバラコトキシンA(1)の合成を最初の目標としている. まず, 11α-ヒドロキシプロゲステロンを出発物質として, ステップ数20, 総合収率37%で中間体(5)の20位のカルボニル基が立体選択的に水酸基に還元された化合物を得た. この化合物の閉環反応により, モルホリン環が形成されれば本合成はほぼ完了したといえる. 2.この中間体の合成には, 長時間の実験と多大の費用が必要である上に, この閉環反応には困難さが予想されるので, モデル化合物(6)の20位のカルボニル基を水酸基に還元したものを合成し, そのモデル化合物で閉環反応を検討した. その結果, PhTeBr_3+AgBF_4, PhTeCN+AgBF_4, PhSeCl+AgBF4, Hg(CF_3COO)_2などが優れた閉環試薬であることが分かった. 3.中間体(5)より得られた化合物の反応においても, 閉環は起こったが, 収率が50%以下なので, 更に改善する必要がある. 4.モデル化合物(6)の合成の最初のステップはプレグネ/ロンの3-位の水酸基の脱離によるジエンの合成であるが, このステップは通常の脱水試薬を用いた場合副反応が起こりやすく困難であったが, 硫酸銅をシリカゲル上に担持したものを用いると, 高収率で目的のジエンが得られることを見出した. 硫酸銅だけではなく, シリカゲル上に担持した様々な金属硫酸塩が第二, 三アルコールの脱水反応の触媒になることも見出した. 5.シリカゲル上に担持する塩を硝酸塩に変えると, 脱水反応は起こらず酸化反応が起こり, 高収率で第二アルコールはケトンに, ベンジルアルコールとアリルアルコールはアルデヒドに酸化されることを見出した. この反応はラジカル機構で進行することも判明した.
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