研究概要 |
1.有機ランタノイド錯体の合成. 1-1 配位子の合成. ビス(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成. 標記配位子はランタノイドイオンの安定化, 生成する錯体の有機溶媒への可溶化に対し有利であるので, ジエチルケトンとアセトアルデヒドを出発原料として6段階の反応により全収量約1%で合成した. 1-2 錯体の合成, a)無水塩化物の合成. ランタノイドのハロゲン化物は一般に結晶水をもっており, またその無水物も吸湿性が高いため, 錯体合成の収量を上げるには系内で無水物を生成させて直ちに配位子と反応させる必要がある. 本研究では従来脱水に用いられている塩化チオニルに代って, メチルシランを用いる方法を開発した. この方法により無水SmCl3, 無水YbCl3を効率よく生成させることが可能となった. b)有機Sm, Yb錯体の合成, 1-1で合成した配位子と無水SmCl3または無水YbCl_3とから[(n^5-C_5Me_5)_2SiMe_2SmCl_2K(THF)_2](〓), [(η^5-C_5Me_5)_2SiMe_2YbCl_2K(THF)_2](〓)をそれぞれ合成した. Ybヒドリド錯体は〓のトルエン溶液にtBuLiを加えてアルキル錯体を合成したのち, 系に水素を導入して合成した. 1-3 有機ランタニド錯体の反応性 今回の研究では時間的に光化学反応を行なうまでに到らなかったため, 熱的反応性のみについて報告する. 1-2で合成したヒドリド錯体〓を用いてシクロヘキセンの水素化反応を水素雰囲気下で試みたところ, シクロヘキサンは全く得られなかった. 一方, シクロヘキサン添加の場合シクロヘキシルがσ-型に結合したと考えられるアルキル錯体が得られた. このことはシクロヘキサンのC-H結合が〓によって活性化されたことを示しており, Luのビス(シクロペンタジエニル)メチル錯体からメタンが生成する反応と関連して興味ある結果である. 錯体〓〓〓の光化学的挙動, YbSmのジチオカルバメート錯体の合成とその反応性についても今後検討したい.
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