研究概要 |
新しいタイプの医薬として期待されるデヒドロペプチドの一般的合成法を確立するため, タンパク構成アミノ酸に対応するデヒドロNCA(N-カルボキシデヒドロアミノ酸無水物:△NCA)15種類を合成した. 特に側鎖に官能基を有する△NCAを, 新たに7種類(△Tyr, △Lys, △Orn, △Asp, △Asn, △Glu, △Gln)合成し, それらの側鎖官能基の保護についても検討を加えた. さらに, △NCA法(one-potでデヒドロオリゴペプチドの合成が可能な画期的な方法)の拡張を行った. すなわち, △NCAのN位へのペプチドの導入をDCC-触媒(ピリジン, ジメチルアミノピリジン等)を用いることで可能とし, カリボキシル基へのアミノ成分ペプチドの反応はN-メチルモルホリンを用いることで, 一挙に長鎖デヒドロペプチドの合成に成功した. また, デヒドロアミノ酸残基が複数含むデヒドロペプチドの合成も併せて行った. X-(AA)m-OH+△NCA+H-(AA)n-OY→X-(AA)m-△AA-(AA)m-OY AA:アミノ酸 △AA:デヒドロアミノ酸 m=0〜4 n=1〜7 上の知見をもとに神経ホルモンペプチドであるエンケファリン(EnK)類のデヒドロ化を種々行った. 特にEnkの重要な活性部位であるチロシンのデヒドロ化を初め数残基のデヒドロ化にも成功した. また, デヒドロアミノ酸残基の位置の異なるトリデヒドロペプチド50数種類合成し, 不斉水素化能とコンホメーションの相関関係を明らかにし, N-末端デヒドロアミノ酸残基は最も離れたC末端アミノ酸残基からの不斉誘導を最も強く受けるという興味ある知見を得た. さらに最近, 単離構造決定されたグラム陽性菌にのみ活性を示すラベンドマイシンアナログの合成, および動物のルピノシス病の原因物質として知られているホモプシンAの重要な部分構造(△Pro-△Ile-△Asp)の合成にも成功した.
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