研究概要 |
経口投与によってマウスの腫瘍を抑制する米糠由来の多糖はα(1-6)結合を主体とし, (1-3)枝分れ構造を有するグルカンであることは我々がすでに明らかにしていた. 本年度は分子量100万以上といわれるこの多糖を部加水分解や超音波処理などで低分子量化することによって抗腫瘍活性ならびにマクロファージ活性化能などが分子量約1万の画分まで保持されていることを明らかにし, つづいてこれらの活性を担う化学構造を追求した. すなわち常法であるメチル化分析とともにエンド型, エキソ型酵素であるデキストラナーゼおよびグルユアミラーゼを組合わせて解析した結果, 分枝の頻度が約5%であること含めて, 基本的な構造は天然多糖としてよく知られているデキストランと酷似していることがわかった. 全く抗腫瘍活性を示さないデキストランとの構造上の差異を調べるため, 次に接触酸化によって非還元末端糖分残基をウロン酸に変換して標識したのち, 上記の酵素分解を適用してさらに詳しく検討したところ, 分枝部の平均残基数を算出して推定構造を求めることができた. それによるとデキストランに比して米糠からのものは分枝部がやや短いばかりでなく, その長さが比較的そろった多糖であることが明らかになった. さらにこの過程でウロン酸を含むオリゴ糖の液体クロマトグラフィー化による分析法を開発することにも成功した. さらに米糠多糖は強酸性イオン交換樹脂によって分子量約6万に低分子化することが明らかになった. これは本来6万程度の分子量のグルカンが何からの陽イオンの関与で会合していたことを示唆するものであり, デキストランにはこのような低分子量化の現象が全く見られないことから, この性質が上述の枝の長さの均一さと共に米糠多糖の独特の生物活性に与っている可能性が大きい. 現在この会合現象の化学的解明を目ざして研究を継続している.
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