研究概要 |
社会性昆虫である蟻の大部分は両性生殖をするが, その中でアミメアリのみが単為生殖をする. この蟻の卵発性は遺伝的にきちんと制御されていて, 外部環境の影響が少く化学物質によって制御されていると推定される. そこで本研究ではアミメアリの卵がどのような原因で発生を開始するか, 発生に関与する化学物質の構造を調べた. まず, アミメアリは働きありのみから成立っているので, この働きありがどのような分泌物を放出するか調べた. アミメアリの分泌物をn-ペンタンで抽出し, その抽出物を先ずGPCカラムを接続した高速液体クロマトグラフィーで分析した. 始めにカラムから流出した成分は色素で, ついで脂肪酸, さらにテルペン炭化水素が流出した. このことからアミメアリの分泌物は3種類の化合物からなることがわかった. ついでこれらの化合物群をさらに詳細に分析すると, 脂肪酸はC18:lが主成分(13.8%)で, ついでC18:2(3.3%), C18:0(2.1%)含まれていた. また炭化水素部はβ-ピネン(33%), カンフェン(9.4%), α-ピネン(9.1%)およびリモネン(5.3%)からなることもわかった. 色素部はこれ以上分析はしなかったが, これは自己複製には関与していないと推定される. そこで現在, これら脂肪酸とモノテルペン炭素水素をアミメアリの卵にぬりつけ, 卵の発生に各々の化学物質がどのように関与しているか, 生物試験により確認中である.
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