研究概要 |
ワサビ墨入病菌を2%グルコースを添加したポテト培養液で, 25°C, 2〜3週間静置培養すると徐々に黒色化し代謝物を生産する. 培養液をクロロホルムで抽出し, 得られた抽出物をベンゼンーメタノールを展開剤とする分取獲層クロマトグラフィーあるいは分取高速液体クロマトグラフィーで分離・精製し, 代謝物として数種の一連の化合物を単離した. 1) ワサビジエノンーAの酸化物: 既に単離・構造決定したワサビジエノンーA(WA)は天然物としてはユニークなシクロヘキサジエノン骨格を持ち, 容易に酸化され易く, リノレイン酸に対して抗酸化作用を示した. WAは薄層板上あるいは空気中で酸化されて褐色物になる, この酸化物を分離・精製した結果, 一つでは2-ヒドロキシー6-メトキシー3.5-ジメチルー1.4-ベンゾキノンであった. 他は無色粘稠な液体でWAより酵素原子1個増えたm/z284, 分子式C_<14>H_<20>O_6を示した. その構造は角種スペクトルおよびアセチル誘導体, mp60〜16°C, の単結晶メ線構造解析を行い, 絶対構造を含めて(2R, 4R)-4-ヒドロキシー5-メトキシー24-ジメチルー2-〔(2R)-2-メチルブチルオキシ〕-5-シクロヘキセンー1.3-ジオンと決定した. (2 ワサビジエノンーEの構造: ワサビジエノンーE(WE)と名付けたmp132〜134°C, 黄橙色プリズム状結晶, m/z311, 分子式C_<16>H_<25>NO_5は各種スペクトルおよび芳香族化合物の誘導などの結果から, WAの5位の水酸基の代りにヒドロキシエチル基を持つ構造であると決定した. 3) その他: WA, WEと共通の母核を持ち, 抗菌活性を示す誘導体を3種単離しており, それらの構造も検討した.
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