研究概要 |
ワモンゴキブリの性フェロモンは1950年代にその存在が示され, 1970年代になって, 2種のフェロモン(ペリプラノンAおよびB)が単離された. しかし, 天然からは超微量しか単離されなかったため, その構造は決定されなかった. そのため特に, ペリプラノンAに対して世界中で精力的な研究が行われ, 現在までに4種の構造式が提出されている. 本年度までに, そのうちの3種を, 十員環セスキテルペンの生合成類似反応を用いることにより全合成することに成功した. 4種の提出された構造は, その提出者の名前で区別している. 先ずPersoonsのペリプラノンAは, ワモンゴキブリに対し全くフェロモン活性を示さなかったことから, 真のフェロモンではないことを明らかにした. ついでMacdonaldのペリプラノンAについても全くフェロモン活性は存在しないことを明らかにした. 最後にHauptmannのペリプラノンAは, 非常に強い活性を示したため, 合成的にHauptmannの提出したペリプラノンAの構造式が正しい可能性が高いことを示した. しかし合成したHauptmannのペリプラノンAのスペクトルデータが天然より単離された物と異なることが明らかになった. 従ってHauptmannのペリプラノンAは全く新しい性フェロモンであることが証明されたことになる. 今後は4種の提出された構造式のうち, 未だ合成していない残る1種の合成を行う予定である.
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