研究概要 |
流れ分析法は, 1975年に新しい概念に基づいた連続分析法として提唱された. 以来, 広い分野で応用の範囲は拡大の一途をたどり, めざましい発展をとげてきた. 本研究では, この流れ分析法と接触反応の特徴を組み合せた高感度, 高選択な分析法の確立を目的とし, 基礎的事項の検討を行なった. ある種の金属イオンは, 錯化剤, 例えば, EDTA, α-ヒドロキシ酸あるいはカテコール類の共存下で, 臭素酸カリウムのような酸化剤を添加すると, 電極で還元を受けた金属錯体は, 電極近傍に存在する多量の酸化剤により再酸化を受けて元の化学種へ変換され, 再び電極反応に加わるために反応電流が流れ, 増感が得られることは, 既に報告した. 今回, 半導体産業において, 重要視されているゲルマニウムに注目し, ゲルマニウム(IV)が, 錯化剤を添加しない電解液中ではポーラログラフ還元はみられないが, 例えば, カテコールの錯化剤を共存させると著しい還元ピークを与えることがわかった. さらに酸化剤である臭素酸カリウムを共存させると, 先に述べた再酸化反応を起こすと考えられ, 電極反応に再度加わる反応性電流的性質を示すことが明らかになった. 本法によれば, 数ppmのゲルマニウムを精度よく定量できる. 電気化学的還元反応に基づく本法を流れ分析に応用するうえでの問題点は, 脈流によるノズルの影響が大きく, また, 溶存酸素の除去が重要であることがわかった. 酸素はデガッサーの使用により, ほぼ取り除くことができた. ノイズの低減は, 今後の検討事項であり, ひとつには高精度の送液ポンプの利用かあるいは精度のよいダンパーの導入により解決できると思われる. また, 流路系を恒温槽により制御することにより, シグナルのバラツキは, かなり改善されることがわかった.
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