研究概要 |
微量の銅(II)イオンを錯体としてイオン交換樹脂層に濃縮し, 黒鉛炉原子吸光法で定量する方法について詳細に検討した. 原子吸光分析には, 日本ジャーレルアッシュAA855とFLA100を用いた. 陰イオン交換樹脂懸濁液(ARS)は, アンバーリストA-27(Cl形)を粉砕して調製した. 樹脂の粒径はおよそ30μm以下で, 交換容量は8.15μmegml^<-1>であった. . 確立した基本操作は次の通りである. 銅(II)を0.2μg以下含む酸性溶液(pHCa1)50mlに, 10%塩化ヒドロキシルアンモニウム1ml, 1mMバソクプロインスルホン酸(BCS)0.5ml, 30%酢酸ナトリウム4mlを順次加え, 10分間放置する. さらにARS1mlを加えて5分間撹拌後, 吸引濾過により, 孔径0.45μm, 直径25mmのメンブランフィルター上に樹脂を捕集する. 樹脂薄層を保持したメンブランフィルターを, 水で湿めらせた濾紙上に保存した後, 10mlのビーカーに移し, 0.1M塩酸2.0mlを加えて超音波照射(60秒)し樹脂懸濁液を調製する. その20μlを黒鉛炉に注入する. BCSおよび類似の試薬8種類(1.10-フェナントロリン;5.6-ジメチルー1.10-フェナントロリン;ネオクプロイン;バソフェナントロリン;バソフェナントロリンスルホン酸, BPS;バソクプロイン, BC;2.2′-ビピリジン;2.2′-ビキノリン)を用いて, 銅(I)錯体の陰イオン交換樹脂への吸着について検討した. BC, BCS, およびBPS錯体は定量的に樹脂に捕集されることが分った. さらに塩濃度の影響を検討した結果, BCおよびBCS錯体の吸着は, 1M塩化ナトリウムの共存においても定量的であった. また, 基本操作において液量を300mlまでに増加しても銅の回収は定量的であった. 本法を海水(鯵ヶ沢)および河川水(岩木川)中の銅の定量に応用した. 試料水を0.45μmのフィルターで濾過してから分析した. 結果はそれぞれ0.24±0.03ppb(n=6)および0.56±0.03ppb(n=6)であった.
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