研究概要 |
温泉水や地下水は地下深部の情報を地表にもたらす重要な地球化学試料であるが, 水の溶存成分の起源については不明な点が多い. 本研究では地球化学トレーサーとして^<87>Sr/^<86>Sr比に着目し, 溶存成分の源物質の同定を試みた. 日本には火山地帯だけでなく非火山地帯にも多くの温泉や鉱泉が湧出しており, 全国から47ヶ所選定し, 温泉水や鉱泉水を採取した. 採取した水試料はまずICP-AESを用いてSr含有量を測定した. Sr含有量に応じて2〜50mlの試料からイオン交換によりSrを単離し, 質量分析装置を用いて^<87>Sr/^<86>Sr比を測定した. 尚, 装置は筑波大学分析センターに設置してあるVG-MicromassMM-30を使用した. その結果, ^<87>Sr/^<86>Sr比は温泉が湧出している地域の地表近くの構成, によっていることが分った. すなわち, 火山性の地域では, 0.703-0.708であり, 花コウ岩体や古生層, 中生層の中から湧出しているいわば非火山性地域の0.706-0.710に比べて明らかに低い値を示した. このことは, 日本の第四紀火山岩の^<87>Sr/^<86>Sr比が0.703-0.706, 第三紀火山岩は0.703-0.708, 白亜紀火コウ岩は0.705-0.728, 中生層古生層堆積物は0.707-0.716と対応している. さらに火山地帯の温泉水の^<87>Sr/^<86>Srを細かくみると, 温泉水の値は周辺の火山岩の値と対応していることが分った. これらの結果は, 温泉水中の溶存Srが水-岩石相互作用により比較的表層の物質からもたらされていることを示している. また, 石油や天然ガスと共存して地下深部からもたらされる油田水の^<87>Sr/^<86>Srも調べたが, 油田地域に分布している岩石と水-岩石相互作用をしていることが示された.
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