研究概要 |
希土類元素同士の放射壊変系である. La-Ce及びSm-Nd系を利用した, Ce同位体トレーサ及びNd同位体トレーサと希土類元素存在度パターンをもとにして, マントル及び地殻の化学的進化, マントルの均一性を検討することが本研究の目的である. 主な成果は以下の通りである. (1)LaとCeについて精度の高い同位体比を求めることに成功した. それをもとにすると各々の同位体組成(%)は, ^<138>La(0.09016), ^<139>La(99.9018):^<136>Ce(0.1878), ^<138>Ce(0.2512), ^<140>Ce(88.433), ^<142>Ce(11.128)となる. (2)フィンランドのKemlo及びMustikkamakiからの鉱物, グリーンランドのAmitsoq片麻岩ならびに南アフリカのBushveldハンレイ岩についてのLa-Ce年代, Sm-Nd年代の研究をもとにして, λβ^<138>Laとして, 従来提唱されている値よりも約20%大きな値である2.77×10^<+2>Yr^<-1>が妥当であることを示した. (3)地球最古の岩石である西グリーンランドAmitsoq片麻岩についての研究により, これらの岩石が生成した時代(36〜38億年前)に, 既に地殻は化学的に分化していたことが明らかとなった. Godthaob地域のgrey gneissは, ほぼ隕石的な希土類元素パターンをもった物質から生じたのに対して, Isua地域のgrey gneissは軽希土類元素に欠乏した物質から生じたと考えられ, Sourceの多様性が示された. さらに, Ce,Nd初生同位体比からは, この分化したSourceは, 地球形成後のかなり初期の段階から存在していた事が推測された. (4)地球上の代表的な玄武岩及び大陸地殻の酸性岩のCe・Nd同位体比を求めた. そして, 大西洋中央海嶺及び東太平洋海膨からの中央海嶺玄武岩のCe,Nd同位体比は, 地点にかかわらずに, 比較的類似した値(εCe=-1〜-4, εNd=+7〜+14程度)であることが明らかとなった. さらに, 大陸地殻の酸性岩は, コンドライト的または液体型的な希土類元素パターンの物質から生じたことが示された.
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