研究概要 |
近年, 海砂の使用量の増大とともに, 鉄筋コンクリート構造物の腐食, 崩壊が目立ち, 「塩害」といわれる社会問題を引き起こしている. これは, 鉄筋コンクリート中に許容される塩化物の量は規制されているにもかかわらず, フレッシュコンクリートになった状態での塩化物の溶存状態がはっきりせず, 適当な管理分析手段がないことに起因している. 本研究においては, フレッシュコンクリート中の塩化物の溶存状態とその固定化過程に注目し, その管理分析手法を研究した. 1.微小銀電極を用いたボルタンメトリックセンサーが, 強アルカリ性環境下(pHB以上)でのコンクリート中の塩化物の局所濃度に精度良く応答することを見出した. そこで, このセンサーを用いてフレッシュコンクリート中の場所による分布を調べたところ, フレッシュコンクリート層の下部ほどセンサー電流が小さく, 上部になると増大することが分った. 上部のブリージング水中では, 電流分布に差がなく, その塩化物イオン濃度は, モール法による値と一致した. したがって, フレッシュコンクリート層下部での電流の小さい理由は, (イ)塩化物イオン濃度そのものが低くなっているか, (ロ)塩化物イオン濃度は同じでも, フレッシュコンクリートがスラリー状であるため, その粘度等が影響して電流が小さくなっているためと考えられた. センサー電流に影響を与えるファクターは多く, その詳細を明らかにするまでには致っていない. 2.微小銀電極ボルタンメトリックセンサーによる水溶性塩化物の測定とともに, 置換反応型カラムを用いるフローインジェクション法を開発し, フレッシュコンクリート中の塩化物の測定に応用した. 再現性, 分析精度とも良く, 塩化物の管理分析法として有効な方法であることを確認した.
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