研究概要 |
1.1, 10-フェマントロリンと種々の金属M及び陰イオンXとから, 種々の混合配位子錯体M(phen)_2X_2あるいはM(phen)X_2を合成した. また, できるだけ薄膜にした水晶発振子上に塗布することが必要であるので, これら混合配位子錯体に対する溶剤を検討した. アセチルアセトンやメタノールなどに可溶な錯体があったが, いずれも水晶発振子上に湿布して水を流すと, 溶出してしまった. そこで, 酢酸セルロース, アセトン溶液と混合して塗布することにより, 水を流しても溶出しないようにすることができた. 2.緩衝液の種類やpHなどの液性を変化させて, Fe(phen)_2(SCN)_2錯体中のチオキアン酸イオンのヨウ化物イオンとの交換反応を利用するヨウ化物イオンの定量法を試みた. 1回目のヨウ化物イオンとの交換は振動数の変化量として測定することができたが, 交換することにより付着したヨウ化物イオンを溶出させて, ヨウ化物イオンよりも原子量あるいは式量の小さい陰イオンを再び付着させる適当な溶離剤を見い出すことができなかった. また, 交換により生じた振動数の変化量が非常に小さく(0.5mMヨウ化物イオン溶液を5分間流したときの変化量が約20Hz), 定量に用いることが困難であった. これは, 混合配位子錯体中の交換する陰イオンの式量あるいは原子量の差が, 混合配位子錯体および酢酸セルロースの分子量に比較して非常に小さいためと思われる. 3.以上より, 混合配位子錯体の陰イオンとの交換反応を利用する微量陰イオンの定量は困難であることがわかった. しかし, 銅(11)は中性付近で水酸化物として水晶発振子上に付着するので, この水酸化物イオンと陰イオンとの交換反応を利用すれば, 振動数の変化量も大きく, 微量の陰イオンの定量法への適用が可能であることがわかった.
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