研究概要 |
シングルチャンネル型ICP発光分光分析装置においては光束も受光部も一つであるので, バックグラウンド補正はピーク波長での測光値からバックグランド波長における測光値を差し引く二回の測定を必要とした. 本研究では従来波長の微少移動に用いられていた石英屈折板を高速矩形波で振動させて, ピークとバックグラウンドの二波長における測光を交互に行う, 高速時分割測光方式により, 連続噴霧時はもとより微少量の溶液を断続的に噴霧する一滴法測定のような短時間で終ってしまうスパイクシグナルに対してもバックグラウンド補正を可能とした. 一滴法ICPシグナルをA/Dコンバーターを通した後, パーソナルコンピューターに取り込み, フロッピーディスクに記憶する, 自動トリガー付の高速ディジタルシグナル記録システムを作成した. これにより時分割測定におけるサンプリング周波数がピーク高さ及び面積測定の正確度と再現性に及ぼす影響を検討し, 比較的遅い150msおきのサンプリングでも, 99%以上の正確さ, 1%以下の再現性で測定できることを確認した. 波長シフト用2mm厚の石英板をガルバノメータースキャナーに載せた高速ビームシフターをその駆動回路と共に作成しICP装置内に組み込み, 測定プログラムも同時バックグランド補正用に変更した後, 標準溶液を用いて注入液量50, 100及び200μlでの一滴法測定を行い当初の目的どおりの正確さと精度を得た. 国立公害研の標準試料の一つであるリョウブ中の鉄とアルミニウムをこの装置を用いて一滴法により定量し, 報告値と一致する分析結果を得た. 鉄の分析線には近接線もなく補正は要しないが, アルミニウムは共存するカルシウムによるバックグラウンドがありその補正なくしては正しい定量値は得られなかった.
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